動物園、公的機関、公式出版物などのinstitutional / primary recordによって確認できる情報。
Lion Lineage Lab
日本の飼育ライオン184頭から見える、血縁と移動の構造
Lion Lineage Lab(LLL)は、公開資料をもとに、日本国内で飼育されてきたライオンの血縁関係・繁殖・施設間移動を再構成する独立研究プロジェクトです。
一頭ずつの来歴をつなぎ合わせると、その先に見えてくるのは単純な家系図ではありません。
繁殖によって生まれた系譜が施設を越えて移動し、その移動先で次の世代を生み、さらに別の施設へ広がっていく。
本ページでは、LLLが現在整理している184頭のbaseline datasetから確認された構造を、7つのFigureを通して紹介します。
Structural Findings
Structural Findings
個々のライオンの父母や出生地を確認するだけでは、日本の飼育ライオン全体の姿はなかなか見えてきません。
LLLでは、184頭の親子関係、世代、繁殖、施設間移動を一つのデータセットとして整理し、それらを横断して分析しました。
その結果、個体単位では見えにくかったいくつかの構造が現れました。
FINDING 01
少数の主要系譜から、広い血縁ネットワークが形成されている
184頭の血縁関係をネットワークとして見ると、全体は完全にばらばらな家系の集合ではありません。
現在のbaselineでは7つのconnected componentsが確認され、そのうち最大のcomponentには161頭が含まれます。
これは全184頭の87.5%にあたります。
つまり、今回確認できた日本の飼育ライオンの大部分は、親子関係をたどることで一つの大きな血縁ネットワークへ接続します。
この結果は、日本の飼育ライオン史を理解するとき、一頭ずつを独立した存在として見るだけでは不十分であることを示しています。
184-head baselineにおける血縁component構造。184頭は7つのconnected componentsに分かれ、最大component C01には161頭(87.5%)が含まれる。本図はbaseline内で確認された親子関係に基づく構造を模式的に示す。
FINDING 02
世代をまたいで継続する系譜は限定される
血縁がつながっていることと、その系譜が何世代にもわたって繁殖を続けていることは同じではありません。
184頭について観測できる世代深度を整理すると、baseline内ではdepth 0からdepth 5までの広がりが確認されました。
一方で、すべての系譜が同じように次世代へ続いているわけではありません。
ある世代で多くの子が生まれても、その子がさらに繁殖しなければ、系譜はそこで止まります。
家系の規模を見るだけでなく、どこまで世代が継続したかを見ることで、系譜の持続性という別の側面が見えてきます。
184-head baselineにおけるobserved generation depthの分布。depth 0〜5の個体数はそれぞれ44、39、27、24、30、20頭で、平均observed depthは2.092、中央値は2である。世代深度はbaseline内で確認された親子関係に基づく相対的な観測値である。
FINDING 03
子の数と、系譜の広がりは一致しない
繁殖個体の影響を測る最も単純な方法は、その個体に何頭の子がいるかを数えることです。
しかし、それだけでは系譜全体への影響は分かりません。
今回のbaselineで確認された直接の子の数では、ラインが12頭で最大でした。
一方、子だけでなく孫やその先まで含めたdescendant reachでは、ガオーが89頭に達します。ガオー自身のdirect offspringは10頭です。
「多くの子を残した個体」と「長期的に広い系譜を残した個体」は必ずしも同じではありません。
繁殖個体の影響を見るには、direct offspringとdescendant reachを分けて考える必要があります。
主要繁殖個体について、直接確認された子の数(Direct Offspring)と、baseline内で到達可能な後代個体数(Descendant Reach)を比較した。ラインはdirect offspring 12頭、ガオーはdirect offspring 10頭に対してdescendant reach 89頭を示す。後代到達数はbaseline内の確認済み親子relationに依存する。
FINDING 04
ライオンは施設間移動によって、全国ネットワークを形成している
血縁ネットワークを広げるもう一つの重要な要素が、施設間の移動です。
今回のbaselineでは、移動元と移動先の双方を確認できる恒久的な施設間移動として、108頭について119件を分析対象としました。
そこから確認されたのは、45施設、84のdirected routesからなる移動ネットワークです。
ライオンの系譜は、一つの動物園の中だけで形成されてきたものではありません。
ある施設で生まれた個体が別の施設へ移り、そこで繁殖し、その子がさらに別の施設へ移動する。
こうした移動の積み重ねによって、血縁は全国へ広がっていきます。
184-head baselineから抽出した、移動元・移動先を確認できる119件の恒久的施設間移動によるnetwork。対象は108 individuals、45 facilities、84 directed routes。network densityは4.24%、reciprocityは7.1%であり、14施設からなる主要strongly connected componentが確認された。本図は施設間移動構造を模式的に表す。
FINDING 05
施設には、それぞれ異なるネットワーク上の役割がある
施設の重要性を、単純な飼育頭数だけで測ることはできません。
ある施設は複数の場所からライオンを受け入れます。
別の施設では、受け入れた個体同士、あるいは受け入れ個体と既存個体との間で繁殖が起こります。
さらに、その子が別の施設へ送り出されることもあります。
LLLではこの構造を、Convergence — 複数の系譜や個体が集まることと、Redistribution — そこで生まれた次世代が再び外部へ広がることとして分けて分析しました。
strict convergenceの条件では20施設、136 birthsが確認されました。
この視点を加えることで、施設は単なる「飼育場所」ではなく、系譜が集まり、組み合わされ、再び外へ送り出されるネットワーク上のノードとして見えてきます。
施設ごとのConvergenceとRedistributionを比較したmatrix。strict convergence条件では20施設、136 birthsを確認した。本図では固定した判定条件を満たす施設について、複数起源個体の集積と、その施設で生まれた次世代の外部移動を比較する。Redistribution軸のplot対象は確定条件を満たした18施設である。
FINDING 06
主要系譜は、複数施設を横断して拡散する
大きな系譜は、一つの施設だけで世代を重ねて大きくなったわけではありません。
出生、移動、繁殖、再移動を繰り返しながら、複数の施設へ広がっています。
その代表例がガオーを起点として観測される主要系譜です。
baseline内では、この系譜には90頭が含まれ、23施設に広がり、施設間には39のdirected routesが確認されました。
さらに、この系譜では施設で生まれた後代のうち45頭について、別施設へのredistributionが確認されています。
系譜の広がりは、繁殖数だけでは説明できません。
どこで繁殖し、そこからどこへ移動したか。
この二つを重ねることで、初めて系譜の地理的・施設的な広がりが見えてきます。
主要系譜について、所属個体と施設間移動を重ねたfacility footprint。ガオー系ではbaseline内90 members、23 facilities、39 directed routesが確認され、そのうち45 redistributed offspringが次の施設へ移動している。系譜規模と施設拡散を同一network上で捉えるための図である。
FINDING 07
血縁ネットワークと施設ネットワークは、一体として理解する必要がある
ここまでの結果を重ねると、日本の飼育ライオンの構造を単純な家系図だけで説明できない理由が見えてきます。
系譜は繁殖によって増えます。
しかし、その系譜が全国へ広がるためには施設間移動が必要です。
移動した個体が別の施設で出会うことで、異なる系譜が一つの場所へ集まります。
そこで新たな繁殖が起きれば、複数の系譜を受け継いだ次世代が生まれます。
そして、その次世代が再び別の施設へ移動します。
この構造は、Lineage diffusion → Facility convergence → Reproduction → Composite ancestry → Redistribution → Further diffusionという循環として捉えることができます。
血縁ネットワークと施設ネットワークは別々のものではありません。
互いに影響しながら、一つの大きな構造を形成しています。
184-head baselineのStructural Findingsを統合したconceptual model。系譜の施設間拡散(diffusion)、複数起源個体の集積(convergence)、繁殖、複合的な祖先構成の形成(composite ancestry)、次世代の再分散(redistribution)、さらなる拡散という再帰的な構造を示す。
Integrated Interpretation
What the Network Shows
184頭のデータから見えてきたのは、一本の家系図ではありません。
日本の飼育ライオンの血縁構造は、繁殖 → 移動 → 受け入れ → 再繁殖 → 次世代の再移動という反復によって形成されています。
個体が施設を越えて移動することで、それまで別々だった系譜が出会います。
そこで生まれた次世代がさらに別の施設へ移れば、新しい接続が生まれます。
つまり、日本の飼育ライオン史を理解するには、Lineage Network × Facility Networkとして見る必要があります。
LLLが再構成しようとしているのは、一頭ずつの履歴だけではなく、その履歴が重なったときに現れるネットワーク全体です。
Dataset
Baseline Dataset v1.0
現在のStructural Findingsは、LLL全国個体DB v1.0に登録された184頭をbaselineとして分析しています。
このdatasetは、日本国内で飼育されてきたすべてのライオンを完全に収録した全国悉皆データではありません。
現時点で公開資料から確認・整理できた個体を基礎とするbaselineです。
そのため、まだ確認されていない個体、移動、親子関係が存在する可能性があります。
LLLでは、それらを推測で埋めるのではなく、新しい資料が確認された段階でdatasetを更新していきます。
Evidence
Evidence Policy
信頼できる二次資料や複数資料によって十分に支持される情報。
利用可能な資料から有力と考えられるものの、追加の確認を必要とする情報。
現時点では確認できない情報。
確認できない部分を、もっともらしい推測によって埋めることはしません。
分からないものは、分からないまま残す。
それもLLLのデータ構築方針の一部です。
Method
How This Analysis Was Built
Structural Findingsは、LLL全国個体DB v1.0に登録された184頭について、確認済みの親子関係と施設移動を構造化し、複数の視点から分析したものです。
主な分析対象は、parent-child relations、observed generations、direct offspring、descendant reach、facility movements、facility inflow / outflow、lineage diffusion、facility convergence、reproductive redistributionです。
一つの指標だけで結論を出すのではなく、個体 × 血縁 × 世代 × 繁殖 × 施設移動を重ねることで、全体構造を捉えています。
About
About Lion Lineage Lab
Lion Lineage Lab(LLL)は、日本国内で飼育されてきたライオンについて、公開資料から血縁・繁殖・施設移動の歴史を再構成する独立研究プロジェクトです。
目標は、最初から完全な系譜を提示することではありません。
現在確認できる資料から全体像を構築し、確認できたこと/確認できないこと/今後確認すべきことを区別しながら、継続的に更新していきます。
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